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2006年8月28日 (月)

現代と神道 ~その3~

 さて、前々回の続きです。

 どうしてもイザナミノミコトを忘れることの出来ないイザナギノミコトは黄泉の国まで逢いに行きます。

 黄泉の国・・・そこは死者の国です・・・。
 生きた者が来るのを堅く拒んでいる・・・。

 その御殿は冷たい扉が現世との間をしっかりと塞いでいました。

 しかし、愛する夫イザナギノミコトが遙々、このようなところまで訪ねてくれたことを知り、妻であるイザナミノミコトは扉のところまでやって来ます。

 すると、扉越しにイザナギノミコトが優しい声で
「あぁ、愛しい我妻イザナミよ・・・。私とお前が創った国はまだ形を創っただけではないか・・・。まだ完成したわけではない・・・。私にはまだお前の助けが必要なのだ。どうか私と一緒にもう一度戻ってきてはくれまいか・・・。」

 この呼びかけに対し、イザナミノミコトは次のように答えました。
「あぁ、愛しい我が夫よ。何故もっと早く来てくださらなかったのですか・・・。私はもうこの黄泉の国で、不浄な火と水で炊いた食べ物を口にしてしまいました・・・。私の身体はもう穢れてしまった・・・。それでも愛しい我が背の君(女性が兄、夫、恋人を呼ぶ時に使う言葉)が、わざわざ私をお迎えにおいでになったことは嬉しくて堪りません。私はなんとしても帰りたいと思います。ですからこの黄泉神達に相談をして帰っても良いか、お伺いを立てて参ります。ただ、その間はどうか、私の姿はご覧にならないで下さいませ・・・。」
そう言って御殿の中へと戻って仕舞われました。

 言われた通りに扉の前で佇み、お待ちになるイザナギノミコト。
しかし、いくら待っても愛する妻は戻ってこないのです。
待ちかねたイザナギノミコトは約束を破って扉の中へと入っていく決意を固めました・・・。

その扉の中は真っ暗闇で、イザナギノミコトは角髪にゆったその髪を留める爪櫛を手に取り、その櫛の1番大きな歯を折り、そこへ火を灯し、暗闇の御殿の中を中を先へ、先へと進んでいきました。

その乏しい光に照らされてようやくイザナミの姿が眼に映りました・・・・が、なんという有様なのでしょう!!!

 それはかつて自分が知っていた、愛する妻とは思えない・・・、身体中に小さな蛆がたかりクネクネと動き、至る処から膿がドロドロと流れ出している身体でした・・・。
 さらに、愛する妻の身体・・・その頭からは大雷(オホイカヅチ)が、その胸には火雷(ホノイカヅチ)、その腹には黒雷(クロイカヅチ)、陰処(ほと)には拆雷(サクイカヅチ)、左手には若雷(ワキイカヅチ)、右手には土雷(ツチイカヅチ)、左足には鳴雷(ナルイカヅチ)、右足には伏雷(フシイカヅチ)という都合八柱の雷神がおどろおどろしく、愛する妻の、・・・その腐り果てた身体から生まれていたのです・・・。

 さすがのイザナギノミコトもその有様を見て、恐怖に凍りつき、恐れおののきながら一目散にそこを逃げ出しました。
その逃げていく愛する夫の姿を見たイザナミノミコトは

「あなたという方は・・・。私の恥ずかしいこの有様をご覧になりましたね・・・。」

 そう口悔しげに叫び、黄泉醜女(よもつしこめ=黄泉の国の醜い女神)達に命じ、その後を追いかけさせました。
イザナギノミコトは一生懸命逃げましたが追いつかれそうになり、自分の髪を留めていた鬘(かずら=髪を留める冠)を後ろに投げ捨てました。
すると地に落ちた鬘から葡萄がなり、腹を空かせた黄泉醜女はその実を奪い合って食べ始めたのです。その間にイザナギノミコトは遠くへ逃げることが出来ました。

 しかし、その葡萄の実を食べ終えると黄泉醜女達は再び追い始め、また危なくなりました。今度は、さっき歯を折って火を灯した櫛を再び髪から外し後ろへ投げました。
すると地に落ちた櫛がタケノコとなり地面からニョキニョキと生えました。
黄泉醜女達がそれを食べている間にもっと、もっと遠くへ逃げることが成功したのです。

一方、イザナミノミコトは更に怒り狂い、自分の身体から生った八柱の雷神達に命じ、黄泉の国の軍隊をつけ夫の後を追いかけさせます。
雷神と大軍に迫られたイザナギノミコトは十拳剣(とつかつるぎ=長さが拳十個分の意)を抜き、黄泉の軍隊を振り回しながら追い払い、遠くへ逃げていきました。
それでも追っ手は追跡をやめませんでしたが、とうとうイザナギノミコトは黄泉比良坂(よもつひらさか=黄泉の国と現世との境とされる)の麓までたどり着きました。
そして、その坂の麓にあった桃の実を三つ取り上げ追っ手に向かって投げつけました。
するとその勢いに追っ手の者共は恐れをなし、悉く逃げ帰って行くのでした。

大変な危機から逃れたイザナギノミコトは桃に向かってこう言いました。
「お前は今、私を助けてくれた。この国に住むありとあらゆる命健やかな人達が、もしも辛い目に遭って苦しむようなことがあったら私と同じように助けてやってくれ。」
そしてその桃に「意富加牟豆美命(オホカムヅミノミコト=大神の実)」というなを与えました。

一方、追跡が失敗に終わったことを知ったイザナミノミコトは最後に自ら、夫の後を追ってきました。が、イザナギノミコトは「千引石」という千人力でやっと動かせるほどの大岩を黄泉比良坂の中央まで引きずってきてそこへ置き、その出入口を塞いでしまいました。
そしてその岩のところまでやって来たイザナミノミコトに向かって、イザナギノミコトは岩を挟んだ状態で事戸(これを限りに契を解くこと=離縁宣言)を申し渡しました。

この言葉を聞いたイザナミノミコトは
「愛しい我が背の君よ・・・。あなたは約束を破って私を辱めました・・・。私はあなたを許しません。その仕返しにあなたに国の人々を一日に千人ずつ絞り殺しましょう。」
これに対してイザナギノミコトはこう答えたのです。
「愛しい我妻よ・・・。確かに私はお前を辱めてしまった・・・。だからお前がそのような非道なことをするのであれば甘んじて受けよう・・・。だが、私の方は一日に千五百の産屋を建て、子供を産ませることにしよう。」

このような誓いがあったので、この国の人口はこれ以降、一日に五百人ずつ増え続け、現代に至ると云われています。また、この誓いに於いて「死」を司る立場となったイザナミノミコトのことを「黄泉津大神(ヨモツオホカミ)」とも言われる様になりました。

 さて、長い前置きでしたが、ここまで「古事記」の内容に触れてきて、今回は一つの事柄についてだけ考えてみたいと思います。それ以外は次回「イザナギノミコトの禊ぎ祓い」で触れたいと思います。

 今回はこの最後の行。イザナギノミコトとイザナミノミコトの事戸、「離縁宣言」の部分について触れたいと思います。

 ここではイザナミノミコトが辱められたことに対して怒り、そして悲しみ、その憤りからイザナギノミコトの国の民を一日に千人ずつ殺す事を明言します。
そこには、この世に「生」を受けた者はいつか必ず「死」を迎えるという生命の終わり、つまり「死の原則」が隠されているように思います。
また、イザナギノミコトはそのイザナミノミコトの憤りを、怒りを受け入れ甘んじて受け入れるという姿勢(この意訳には賛否両論ありそうですが)を以てその「死の原則」を受容し、我々人間がその「死」への唯一の対抗手段とも言うべき「子孫を残す」という行動に依って「死」というものの恐怖から解放され、より我々が繁栄をするための道を指し示しているように思うのです。
つまり、それは「生命の縦の連鎖」であり、太古の祖先から現代を生きる我々まで広遠と繋がる「Eternal Life」なのではないでしょうか。

「死」、それは恐るるにも足らぬ事である。
我々は子孫を残し、我々が築いてきた伝統や文化、歴史を受け継いでもらうこと。
それによって我らの生きた証、道統を残せるではないか・・・。

そんな風に、先人達が言っているように私には聞こえるのです。

 しかし、現代は「男女共同参画基本法」に代表される「フェミニズム」「ジェンダーフリー」などという、人間が本来、生得的に持ち合わせている役割を無視したような思想や社会状況が推進され、特に「女性の社会進出」が声高に叫ばれています。
 この「古事記」のこの項における教えの一つとして、男女の役割を必要以上に変えることなく、生得的に神様がお与え下さった役割や立場などを尊重し、お互いが助け合い、そのバランスを均等に保つことが重要なのではないか、と感じるのです。

 そして今、この日本では「少子高齢化」が加速的な早さで進行し、遂には「人口の減少傾向」が起こり始めました・・・。

 私は女性の社会進出を拒むわけではありません。また、『所謂「大和撫子」を手本とし、女は控えめにして男を立てろ』などと言うつもりも毛頭ありません。
 しかし、女性の方でも社会進出をすることよりも専業主婦を望む方も多くいらっしゃると思うのです。(私の妻もその一人です。)
それなのに、俗に言う「フェミニスト」の方や「ジェンダーフリー」を推進される方々は勿論ですが、現政府の政策の在り方までもが・・・・・と感じてしまうのです。

 このまま「女性の力」(黄泉津大神=イザナミノミコトの力)があまりにも強くなって行ってしまうと・・・・・。
 少子化は解決できないのではなかろうか・・・・・そんな危惧を抱いてしまう、今日この頃です。

   つづく・・・・・

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コメント

かついちさん、こんばんは。
コメント有難う御座います。

かついちさんの彼女さんは素晴らしい女性ですね。
ご自分の考えがきちんとお在りになり、それをちゃんとした形でご自分の御言葉と出来る方なんですね。

私の妻も同様なことを申しておりました。
ちなみに我妻はテレビにも良く出てくる某大学教授で元国会議員のT女史がとても「嫌い」だそうでテレビに出てくると
「あーっ!!もうっ!!」
と、イライラした声を上げながらチャンネルを変えます。(笑)
更に付け加えると
「こういうオンナがテレビでピーチクパーチクうるさく言うから専業主婦がナメられんのよ!!!!」
とちょっと女性の発する言葉とは思えないような言葉まで口にします・・・。これは少し反省して頂きたいですね・・・。(汗)
でも彼女の言うことも尤もであり、こういう方が、男女の生得的な役割を無視し、彼女らのような所謂「インテリ女性」的な方々を中心とした女性観で社会を構築しようとしている現状では、目下、少子化は加速度的速度で進行しているわけです。

私は日本の「神道」を信仰し、それを体現する神職ですから本来はこれは素晴らしいと言っていいのかどうか判りませんが、素晴らしいものはやはり素晴らしいので最大級の賛辞を送りますが、以前の「国連女性会議 北京大会」でのマザー・テレサの発言はやはり素晴らしいものですね。

こういった発言も考えつつ、本質的に女性がその「個性」を充分に発揮できる社会創りこそ本道ではないかと思います。

かついちさんご自身のお話をお聞かせ頂きまして有難う御座いました。
彼女とも仲良く、いずれ素晴らしいご家庭が築けると良いですね。心からお祈りいたします。

有難う御座います。

投稿: 管理人 | 2006年9月 5日 (火) 01時30分

長らくご無沙汰しておりました。
少子化問題とそれにつきまとうさまざまな問題、これから結婚・出産を経験しようとする私たちにとっては不安要素がたくさんあります。子供がたくさん欲しいと思っていても、税金が高くなるのでは経済的に育児は難しくなるし、女性も働かなければ家族を養っていけないし、子供ができたら教育面での出費も大きく家計に響くでしょうし。どれも現状のままではとてもじゃないけど、結婚すら気が引けてしまいます。私はしばしば彼女ともよく話をするのですが、彼女は結婚後専業主婦になることを希望しています。その時私は彼女に「なぜ専業主婦がいいの」と聞いたら彼女は「それが私には性に合っている」というのです。続けて「専業主婦になることが私の夢であり、希望なので、あえて自分で仕事を見つけてバリバリ働くつもりはないし。それに、家庭や育児のことは女性にしかできないことってたくさんあるし、それをするのが生き甲斐だと思う」と・・・。
そういう生き方をあえて見つける人もいるんだなと改めて感心してしまいました。この現代社会、女性の社会進出はめざましいものがありますが、それがために専業主婦に対する見方は冷たいのかなと感じるときがあります。女性はこうあるべき、と決めつけることはよくないですが、やはり男女それぞれ生まれ持った役割があります。その役割を超えて何でもこなそうと思っても無理なものは無理です。やはり分相応という言葉があるように、今一度男性、女性のそれぞれの役割を考え直す時期に来ているのかなと思っております。

投稿: かついち | 2006年9月 4日 (月) 08時29分

若せんせ、こんにちは。
コメント有難う御座います。

この黄泉の国の行は、この後の禊祓いのところまで含めて考えると、たくさんの大変興味深いことを示唆しているように思えるのです。
それとイザナギノミコトの諦めの悪さ、私も若せんせ同様です・・・。(笑)

女性の社会進出自体は大変素晴らしいことであると私も思います。ただ、それらの女性を奨励することは結構なのですが、そうでない女性の待遇を悪くしたり、「働く女性」を世の女性の中心軸と考えていくような政策は、「少子化」を本当に深刻に考え、解決を図ろうとするのであれば、どこか間違っているのではなかろうか、と思っています。
それには若せんせのご指摘のとおり、「マスコミ」の影響も看過できないものであり、社会保障の充実などよりも子供を生むことの素晴らしさ、結婚や家族の素晴らしさを積極的に盛り上げていく雰囲気作りにあろうと考えています。

的確なご指摘、貴重なご意見を有難う御座います。

投稿: 管理人 | 2006年8月28日 (月) 19時00分

milestaさん、こんにちは。
コメント有難うございます。

本当にmilestaさんのおっしゃるとおりだと思います。

私は外で働きたいと考えていらっしゃる女性の方が、その仕事のために国からの補助やそういった施設の利用を積極的にされることは大変素晴らしいことであると思います。
然しながら、今の政策はあまりにも偏っているように思えて仕方が無いですね。

本当に「少子化」を解決する気があるのか、それとも何らかの政治的な意図を具現化するためだけの捨石なのか・・・・。

私には後者のように思えます。

日本は世界で唯一、2000年以上もの連続した歴史を持つ国です。
そんな国が、「合理的」な社会を望むが故にそのアイデンティティーを壊すことに何の躊躇いもなくなってきている・・・・。
そんなある種の「冷たさ」が気になって仕方がありません・・・。

そういった疑念の拭えないような政策の在り方が、人の心を限りなく物質的な数量で計っている様な社会が「良い社会」であるはずが無いと思えてしまうのです・・・。
私の誇大妄想かもしれませんが・・・・。

ちょっと感情的になってしまいました・・・。(反省)
milestaさんの仰っていることに心から共感しました。
同じように家内も申しておりましたので、つい嬉しくなってしまいました。

有難う御座います。

投稿: 管理人 | 2006年8月28日 (月) 18時47分

こんにちは。
黄泉国の話は面白くもあるし、怖さも感じます。また奥さんを迎えに行く黄泉国まで行く伊邪那岐命の諦めの悪さ、僕も一緒です。
女性の社会進出は賛成です。が、自分の子供が幼稚園に行ってみると専業主婦してる女性が大半でした。社会的な流れみたいに見えますけど、実はマスコミに踊らされているだけのかな。
社会制度を充実させるのも必要なんでしょうけど、早期結婚や子供を作ることなどの社会的雰囲気を盛り上げることが、今の時代には必要なんだろうと思ってます。

投稿: 若せんせ | 2006年8月28日 (月) 17時07分

一日に千人が死を迎え一日に千五百人が生を与えられる・・・この通りなら国は栄えますね。戦争等で「死」の方が多くなっても国は滅びるけれど、「生」が減っても滅びてしまいます。神主さんの仰るように、もっと出産・子育てを担う女性の役割を重視して欲しいですね。私は仕事にもやりがいを感じていましたが、出産や育児はもっともっと大切な、自分にしかできない務めだと思うので、できる限り専業でやりたいと考えています。けれど、世の中の流れは、仕事をもつ女性に優しく専業には冷たいですね。

投稿: milesta | 2006年8月28日 (月) 10時43分

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